しとしと、雨が降り続くなか、はじめに訪れたのは、
奄美の伝統織物・大島紬の絹糸を染める、泥染め工房『金井工芸』さん。
奄美大島で35年、伝統の泥染めを、今に伝える染工房です。
この日は、こちらの工房の二代目、
金井志人さんに、工房内を案内していただきました。
奄美の泥染めとは、
山から切り出してきたテーチ木と呼ばれる車輪梅を、
チップ状にして二日間煮だし、茶褐色の染料をつくって、
その染料で染めた絹糸を、鉄分を多く含む泥田で揉み叩き、
化学反応で黒に染めていく伝統技法。
手作業でこの工程を100回繰り返すと「大島の黒」と言われる、
大島紬の糸ができるそう。

えーー100回も!
大島紬と言えば高級な着物というイメージがあるけど、
100回と聞くと、それも納得です。
1度に煮出す、テーチ木のチップはなんと600キロ。
木が乾燥してしまう前に煮出すのがポイントだそうで、そうなると、
原材料となるテーチ木を奄美以外の土地から持ってくるのは困難だとのこと。
煮だした後のテーチ木は、乾燥させ、
次に煮出す際、釜にくべる薪となり、
その灰は、藍染めのための灰汁として使用されるそうです。
最後まで無駄がないんですね。
こちらが、工房の裏にあった、金井工芸さんの泥田。
奄美でも、工房のある龍郷町の泥田は、
150万年前の粘土地層が多く残る地域で、
きめ細やかで鉄分を多く含む泥が泥染めに適しているため、
泥染めが盛んな地域でもあります。

3年前、記録的豪雨の影響で、奄美が水害にあった際に、
この大切な泥田にも赤土が混じって、
染色ができなくなったことがあったそうです。
その時に、近所のご老人が、
田んぼの近くに田芋を植えると土壌がよくなることや、
田んぼにソテツの葉を投げ入れると鉄分が蘇ることなどを、
教えてくれたと言います。

「ソテツって、蘇鉄と書きますよね。
その時に、奄美の泥染めは、奄美の風土を利用して、手から手へ伝えてきた、
先人たちの知恵の結晶なんだなぁと実感しました」。
漆黒に染まった大島紬用の絹糸。
まるで人の髪みたいに、つややかで美しい黒の世界。
奥に見えている茶褐色の糸は、テーチ木で染めた絹糸です。

ブラウンから、ブラックへ。

この色の変化を、着物ではなく、
洋服に利用できないかと考えたのが、
十年前に、東京からUターンしてきた志人さんでした。
時代と共に、着物の需要が減り、
産業として大島紬を受け継ぐ工房も減少していくなか、
何度もメーカーに試作品を送り、試行錯誤を繰り返した末、
今では、紬の仕事が半分、
アパレルメーカーからの受注が半分になるまでに、
仕事が増えてきたそうです。
金井工芸さんが、力を入れていることのひとつに、
泥染めの体験があります。
いまでこそ、奄美にはたくさんの工房が、
観光用に泥染め体験を行っていますが、
はじめたのは、ここ金井工芸さんが、一番最初。
しかも、驚くべきことに、
一人一律2,500円の体験料で、
職人さんが実際に仕事をしている傍らで、
持ち込みの洋服や布を、好きなだけ染めさせてもらえるんです!なんて贅沢な!!
なかには、浴衣やカーテンを持ち込む強者もいるそうで…
今回隊員は、自前のTシャツを1枚持参したのですが、
あー浴衣を持ってくれば良かったー!と、
後になって欲がでました。
じゃーん。
体験用の作務衣とエプロンを貸していただき、体験開始!
どんな色に染めたいか、どんなデザインにするのかを、
事前に金井さんと相談して決めていきます。
絞り、ロウケツ、タイダイ、グラデーション。
色合いも、泥藍大島に使用される藍染めのブルー系から、
テーチ木染めのピンクや茶褐色、
泥染めの黒まで、それぞれ濃淡もさまざま。

うーん、どうしよう。

隊員は迷ったあげく、
Tシャツの裾の部分を藍染めでブルーに、
首周りをテーチ木染めで茶褐色に染め、
奄美のサンセットをイメージしたデザインでいくことにしました。
まずは藍染め。
プクプク発酵中の藍瓶の中に、
水でならしたTシャツを漬け、
手で揉み込んで、引き上げます。
引き上げた瞬間は、緑っぽい藍の色が、
空気に触れ酸化することで、
美しい藍色に変化していきます。
これを何度か繰り返し、
藍の部分がうまくグラデーションになるように染めていきます。
藍が染まったら、次は、テーチ木染め。
茶褐色の染料をボールに入れ、
こちらもグラデーションになるよう、何度か漬けては揉みを繰り返し、
その都度水で流しながら、色合いを調整していきます。

はじめは薄いピンク色。
次第に茶褐色に。
意外と少しずつしか染まらないものなんだなぁ。
通常の草木染めでは、
染料を煮だしながら高い温度で染めていくのですが、
テーチ木染めの場合は、染液を常温に戻し、
1週間ほど寝かして、少し発酵させた状態で使用するため、
染液は、独特の香りがします。
工房中その香りに包まれていました。
最後に、きれいな水をたっぷり使って、金井さん自ら、仕上げの水洗いを。

こうして一般の方に泥染めを体験してもらうなかで、
金井さん自身も新たな発見があるそうで、
体験も勉強になる、と金井さんは言います。
遂に完成!奄美のサンセットTシャツ!!
持参したTシャツにもともとあった木片のプリントともマッチしていて、
ナチュラルで味わいのあるTシャツに、生まれ変わりました!

天然の色って、ほんとにほんとにきれいだなぁ。
この地に、1300年前から伝わる、泥染め。
その材料も技術も、
奄美の自然と共に生きてきた人々が創意工夫を重ね、
伝えてきたかけがえのないもの。

「体験の方には、奄美の自然から生まれた奄美の色で、遊んでもらいたいですね」

そんな金井さんの言葉のとおり、
奄美の色は、こうして、
脈々と、受け継がれていきます。

工房に響いていた地元のラジオから、
雨の日は、自然がイキイキとしていていいですね、
というコメントが聞こえました。

「奄美は梅雨に関係なく、1年中雨が多いんですよ。
だからこういう雨の日も、奄美らしいと思います」。

悪天候に嘆く隊員に対して、
金井さんがかけてくれた、そんな言葉が印象的でした。

●金井工芸(かないこうげい)


0997-62-3428

鹿児島県大島郡龍郷町戸口2205-1

9時〜18時

無休

体験1人2500円
https://www.facebook.com/kanaikougei





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