各地の神社で行われている 「鷽替え神事」をご存知でしょうか。
夜、暗闇の境内で「木うそ」という
鷽の鳥をモチーフにした木彫の人形を
“替えましょ、替えましょ”の掛け声のもと、
周囲の人と交換することで 
「自分のついた嘘を、天神様の誠(まこと)に替えてもらう」
という意味を持つ伝統的な神事なのですが、
もともとの発祥は約400年前、
天神様である菅原道真を祀った神社といえば
あまりにも有名な福岡県の『太宰府天満宮』から始まりました。
というのも、その400年の歴史の中で太宰府の木うそも
形がいろいろと変化していったそうなのですが、
変化する前の形が、各地の現在の木うその形と
紐付いていることから、太宰府が鷽替えや木鷽の
ルーツであるといわれているのです。

(ちなみに漢字で書く「木鷽」は
太宰府天満宮が商標登録しています)

本来、祭具であり、鷽替え神事が行われる1月7日に、
初穂料1,000円で授与されるものですが、
今回の取材では“民芸品”としての「木うそ」を制作する
「太宰府木うそ保存会」の方々に
木うその歴史や魅力についてお伺いしました。
実は毎月第2日曜日に
「太宰府木うそ保存会」主催で
木うそ絵付体験教室を開催しています。
場所は天満宮から歩いてすぐの
太宰府市地域活性化複合施設「太宰府館」。

「まずは、絵付け体験やってみますか?」

はいっ!やりたいです!
すっごく楽しみにしてました!!

絵付け体験では毎回ベテランの会員さんが常駐しているので、
制作過程や木うその歴史などを伺いつつ
おだやかに絵付け体験スタートです。
太宰府の「木うそ」といえば
くるんと上を向いた“羽”部分が特徴です。
「こういう感じでミノで掘っていきます。
力加減がポイントですね。」
おお!均一で美しい。

「目の形や模様の違いで印象が変わるので
自分だけの木うそを頑張って描いてみましょう!」
木うそは、今でも毎年冬か春先にかけて、
山の桜の枝などに飛来する、
鷽の鳥がモチーフなのですが、
太宰府には鷽にまつわる数々の伝承があるそうで、
「身にかかる災いを除いてくれるありがたい鳥」や
「天神様のお使い」などといわれて来たそうです。

スズメのような丸っこいフォルムに
ポッと染まった胸の赤色が特徴なので、
その可憐さをイメージしつつ…

「赤の後は頭の縁の部分を緑に、
そうそう、上出来、上出来!
筆ペンで目をしっかり描いて、
最後に金の紙を頭に貼れば出来上がりですよ。」
こちらが職人さんと一緒に作った「木うそ」!
大切にお家に飾ろう、と思いましたが、
自分の分には3cmほどの小さな木うそをいただいたので、
この2つは読者プレゼントにさせていただきました。

ぜひ、神事に備えてまずは絵付け体験がおすすめですよ!
保存会の歴史を教えていただいたのは、会長の青柳健夫さん。

「昔は地元でもたくさんの人が木うそを作っていて、
おみやげとしても販売していたんですよ。
けれど、だんだん材料である朴(ほう)の木も少なくなり、
作り手も高齢になって、土産店からも姿を消してしまっていました。
天満宮としても後継者をどうしようかという時に、
太宰府市の商工会で、特産品を掘りおこそうという話がでて、
それだったら、もう一度木うそを
制作してみてはどうかいうところから始まったんです。
それが約20年前のことですね。」

天満宮の祭祀さんを講師に、
少しずつ制作者が増えていき、
平成10年には正式に「太宰府木うそ保存会」を発足。
現在ではなんと58名の会員さんがいらっしゃるそうで、
技術の伝承はもちろん、
コシアブラを中心とした材料となる原木の育成、
そして、今回体験させていただいた絵付けワークショップなど、
木うそ存続のためのさまざまな活動を行っています。

「そういえば、小さな木うそが入ったおみやげ
“うその餅”って知ってます?」
と、保存会会員 柳 智子さん。
連れて行っていただけるとのことなので、
参道の和菓子屋さん「梅月」に向かいます。
すごく雰囲気の良い和菓子屋さん!
昭和23年に創業して以来、大宰府を代表するこちらの場所で
賢所献上菓子『宝満山』や『うその餅』などの和菓子を作り続け、
もうすぐ70年の節目を迎えられるという、老舗和菓子屋さんです。
どれが『うその餅』なのかは一目瞭然!
一箱にひとつ、愛らしい鷽がちょこんと入っている和菓子を発見。
11月現在は焼き物の鷽が入っていますが
鷽替え神事が行われてからの数ヶ月は
保存会の方々が制作した「木うそ」が入っているとのこと。
青じそ風味の求肥がとってもさわやかなお味もクセになる!
若草色のそぼろは、戦後、人々の心が沈んでいるときに、
少しでも気持ちを明るくしたいという願いから。
箱を開けると、パァっと幸せになれる『うその餅』は
おみやげに最適ですよ♡
他にも、鷽をモチーフにしたお菓子…!
そして真ん中には、小さな木うそが!

(右は国立博物館でのイベント用のものなので
販売は行っていません)
というわけで、うその餅を始め、和三盆など
おみやげをたくさん購入した隊員。
「お茶も飲んでいってね〜!」
お忙しい中突然おじゃましたのに、
とってもおおらかな女将さん。
ありがとうございました!
もちろん、天満宮にも行ってきました。
取材時が日曜日だったということもあり、凄い人だなぁ!

会長の青柳さんに、
鷽替え神事の魅力をお伺いしたところ、

「天満宮の神事だから続いてきたんだと思います。
天満宮がなければ存在していませんでした。
鷽替え神事がある1月7日には、同日に「鬼すべ神事」という
火を焚いて鬼、災いを払う火祭りも行われるんですが、
こちらも宰府に住んでいる氏子さんたちが参加する行事です。
そうやって、例祭で季節を感じながら
一年を過ごしていくというのが、当たり前だったんですよ。
鷽替え神事の場合は、アタリの木鷽を手に入れるというのも
魅力なんですけどね(笑)」

鷽替えでは、交換した木鷽の中に「当たり」が混ざっていて、
幸運な人は金のうそが手に入る…(!)というのも
お楽しみのひとつなんです。
それは昔、まだ各個人が木鷽を自作し持ち寄って
交換していた時代からあった風習だそうで、
それゆえ、当時はとても激しい神事で、
女性や子供が入れるような場所ではなかったんだとか。

青柳さんや、柳さんのお話しからは、
「太宰府天満宮」が存在しているということ、
「天神様が祀られている」ということが、
今も地元の人にとって大きな存在であるということが伝わってきて、
とっても羨ましい気持ちになりました。
部屋に飾ると日々が少し、ハッピー、
愛らしくて、ホッとする、太宰府の縁起物。

そこには昔から受け継がれて来た
“楽しく幸せに暮らす”ヒントがありました。


太宰府木うそ保存会
092-922-4258
絵付け体験会
 日時/毎月第2日曜日・11~15時
 会場/太宰府館2階
 (福岡県太宰府市宰府3-2-3)
※上記以外の日程でも5名以上の方は
事前予約にて絵付け体験可能

鷽替え神事
 日時/1月7日・18時から
 場所/太宰府天満宮
 


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